唐突にUXリサーチ以外のことを書く。特に言い訳はしない。
KIRINJIに「虹を創ろう」という曲があり、好きでしょうがないわけではないが、なんだか頭に引っかかる。「君の虹をみせて」という不思議なフレーズが繰り返されるせいだと思う。
歌詞は全体的に子供に語りかけるような口調で、堀込高樹のボーカルスタイルもとても優しげである。なのに、「君の虹をみせて」のくだりだけが、女声で歌われ(たぶんコトリンゴ)、ファンタジックかつどこか超越的で恐ろしくもある異質な雰囲気を放っている。「君の虹をみせて」というセリフが、何かとんでもないことを示唆しているようにすら聞こえてくる。
堀込高樹の歌詞は一筋縄でいかないことを旨とする節があり、キリンジ初期に関しては特に、とんでもないことを隠喩と直接的な表現を織り交ぜながらグッドサウンドに乗せる、ということばかりである。そういうわけで、兄弟デュオ時代が終わった直後の、つまり後期にあたるこの曲の歌詞も平穏一辺倒とは到底思えない。
穏やかさの裏の恐ろしさは、「虫たちを死なせた」「蛇が怖かった」というフレーズが唐突に出てくることからもむしろ明らかであると言っていい。このうち前者、子供がよく虫を無茶に扱ったり故意にいじめたりして殺してしまうことは、子供特有の残虐さとしてよく扱われる事象である。
そう考えると、この曲も、そういう残虐さと創発性が同居した「無邪気な」子供、というモチーフ、あるいは、神隠しのように、超越的なものとうっかりつながりかねない存在としての子供、というものを扱っていると解釈するのがわかりやすい解釈だと思う(わかりやすすぎるのでなんかもっと考えられそうだが)。それにしても、プールの水しぶきや「なわとびの輪から飛び出した大きな子」と紐づけられる「君の虹をみせて」というセリフの意味は結局わかるようでわからず、この曲はバラバラとやまびこを呼ぶ「おーい」という声とともに去っていく。
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